■杉本博司 本歌取り 東下り■渋谷区立松涛美術館
ハロウィンも終えた渋谷の午前中、
スクランブル交差点の人込みをかき分けるように
現在■杉本博司 本歌取り 東下り■展を
開催中の渋谷区立松涛美術館へ。
過去の本歌作品に呼応するように
新たな手法を講じながら、観たものを
うならせる杉本博司のアート的頭脳の良さと
発想の大胆さにあらためて驚いた展覧会。
杉本博司の深い洞察の上で成立した
新たな作品から多くの刺激を受けたひと時。
■杉本博司 本歌取り 東下り■渋谷区立松涛美術館
2023年9月16日(土)~2023年11月12日(日)
September 16, 2023-November 12, 2023
杉本博司(1948~)は、和歌の伝統技法「本歌取り」を日本文化の本質的営みと捉え自身の作品制作に援用し、2022年に姫路市立美術館でこのコンセプトのもとに「本歌取り」展として作品を集結させました。
本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとの中で本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。西国の姫路で始まった杉本の本歌取り展は、今回、東国である東京の地で新たな展開を迎えることから、「本歌取り 東下り」と題されました。本展を象徴する作品である《富士山図屏風》は、東国への旅中に、旅人が目にする雄大な富士山を描いた葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした新作で、本展で初公開となります。またこの他にも、書における臨書を基に、写真暗室内で印画紙の上に現像液又は定着液に浸した筆で書いた《Brush Impression》シリーズなど、本展は新作を中心に構成される一方、中国宋時代の画家である牧谿の水墨画技法を本歌取りとした《カリフォルニア・コンドル》など、杉本の本歌取りの代表的作品も併せて展示します。さらに、室町時代に描かれたと考えられる《法師物語絵巻》より「死に薬」を狂言「附子」の本歌と捉え、その他の8つの物語と共に一挙公開致します。
現代の作品が古典作品と同調と交錯を繰り返し、写真にとどまらず、書、工芸、建築、芸能をも包み込む杉本の世界とその進化の過程をご覧ください。」
三つ峠からの富士山を撮影し
北斎が見たであろう姿を再現した作品
《富士山図屏風》2023年六曲一双
美ぐ麺とプリント 作家蔵▽
2017年に開館した「小田原文化財団 江の浦観測所」に
地霊を祀るために春日大社から春日社を招魂された。
その姿を大海原瀬に見渡した作品
甘橘山春日大社遠望図屏風
2022年 八曲一隻
ビグメントプリント 作家蔵▽
《春日大社藤棚屏風》2022年 六曲一隻
ビグメントプリント 作家蔵▽
廊下からガラス越しに
中庭吹き抜けからの空を眺めて▽
《フォトジェニック・ドローイング005
ルイーザ・ガルウェイとホレーシア・フィールディング》
1842年6月29日 2009年
調色銀塩写真 ベルナール・ビュフェ美術館蔵▽
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットによるオリジナルネガ
《フォトジェニック・ドローイング
タルボット家の住み込み家庭教師、
アメリア・ぺティ女史と考えられる人物》
1840‐41年頃 小田原財団蔵▽
世界のド・ゴールやマッカーサー、チャーチルなど
11名の肖像とともに
《歴史の歴史東西習合図》2008年
杉本表具
ビグメントプリント 作家蔵▽
《Brush Impression 愛飢男(四十五文字)》
2022年 銀塩写真 作家蔵▽
コロナ禍で古くなってしまった印画紙の
活用として生み出された書作品。
極端に暗い暗室の中で印画紙に
現像液または堤脚液に浸した筆で感覚だけで文字を描いた作品。
Brush Impressionシリーズ▽
「古代人が観ていた風景を現代人も見ることは可能なのか」
という問いから制作が始められた海景シリーズ
《相模湾、江の浦》
2021年1月1日 ビグメントプリント
杉本表具▽
ジャック=ファビアン・ゴーティエ・ダゴティ(1711‐1786)は
18世紀のフランスの解剖学者、画家、版画家で
ダコティによる解剖図を杉本が軸装したもの。▽
杉本文楽 曽根崎心中付り観音廻り ヨーロッパ公演
2023年アルジェンティーナ劇場、ローマ
映像:8分14秒▽
杉本博司の過去の展覧会の情報はこちらから
スクランブル交差点の人込みをかき分けるように
現在■杉本博司 本歌取り 東下り■展を
開催中の渋谷区立松涛美術館へ。
過去の本歌作品に呼応するように
新たな手法を講じながら、観たものを
うならせる杉本博司のアート的頭脳の良さと
発想の大胆さにあらためて驚いた展覧会。
杉本博司の深い洞察の上で成立した
新たな作品から多くの刺激を受けたひと時。
■杉本博司 本歌取り 東下り■渋谷区立松涛美術館
2023年9月16日(土)~2023年11月12日(日)
September 16, 2023-November 12, 2023
杉本博司(1948~)は、和歌の伝統技法「本歌取り」を日本文化の本質的営みと捉え自身の作品制作に援用し、2022年に姫路市立美術館でこのコンセプトのもとに「本歌取り」展として作品を集結させました。
本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとの中で本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。西国の姫路で始まった杉本の本歌取り展は、今回、東国である東京の地で新たな展開を迎えることから、「本歌取り 東下り」と題されました。本展を象徴する作品である《富士山図屏風》は、東国への旅中に、旅人が目にする雄大な富士山を描いた葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした新作で、本展で初公開となります。またこの他にも、書における臨書を基に、写真暗室内で印画紙の上に現像液又は定着液に浸した筆で書いた《Brush Impression》シリーズなど、本展は新作を中心に構成される一方、中国宋時代の画家である牧谿の水墨画技法を本歌取りとした《カリフォルニア・コンドル》など、杉本の本歌取りの代表的作品も併せて展示します。さらに、室町時代に描かれたと考えられる《法師物語絵巻》より「死に薬」を狂言「附子」の本歌と捉え、その他の8つの物語と共に一挙公開致します。
現代の作品が古典作品と同調と交錯を繰り返し、写真にとどまらず、書、工芸、建築、芸能をも包み込む杉本の世界とその進化の過程をご覧ください。」
三つ峠からの富士山を撮影し
北斎が見たであろう姿を再現した作品
《富士山図屏風》2023年六曲一双
美ぐ麺とプリント 作家蔵▽
2017年に開館した「小田原文化財団 江の浦観測所」に
地霊を祀るために春日大社から春日社を招魂された。
その姿を大海原瀬に見渡した作品
甘橘山春日大社遠望図屏風
2022年 八曲一隻
ビグメントプリント 作家蔵▽
《春日大社藤棚屏風》2022年 六曲一隻
ビグメントプリント 作家蔵▽
廊下からガラス越しに
中庭吹き抜けからの空を眺めて▽
《フォトジェニック・ドローイング005
ルイーザ・ガルウェイとホレーシア・フィールディング》
1842年6月29日 2009年
調色銀塩写真 ベルナール・ビュフェ美術館蔵▽
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットによるオリジナルネガ
《フォトジェニック・ドローイング
タルボット家の住み込み家庭教師、
アメリア・ぺティ女史と考えられる人物》
1840‐41年頃 小田原財団蔵▽
世界のド・ゴールやマッカーサー、チャーチルなど
11名の肖像とともに
《歴史の歴史東西習合図》2008年
杉本表具
ビグメントプリント 作家蔵▽
《Brush Impression 愛飢男(四十五文字)》
2022年 銀塩写真 作家蔵▽
コロナ禍で古くなってしまった印画紙の
活用として生み出された書作品。
極端に暗い暗室の中で印画紙に
現像液または堤脚液に浸した筆で感覚だけで文字を描いた作品。
Brush Impressionシリーズ▽
「古代人が観ていた風景を現代人も見ることは可能なのか」
という問いから制作が始められた海景シリーズ
《相模湾、江の浦》
2021年1月1日 ビグメントプリント
杉本表具▽
ジャック=ファビアン・ゴーティエ・ダゴティ(1711‐1786)は
18世紀のフランスの解剖学者、画家、版画家で
ダコティによる解剖図を杉本が軸装したもの。▽
杉本文楽 曽根崎心中付り観音廻り ヨーロッパ公演
2023年アルジェンティーナ劇場、ローマ
映像:8分14秒▽
杉本博司の過去の展覧会の情報はこちらから
この記事へのコメント
杉本博司の名で始めピンと来なかったんですが、
あの江之浦測候所を生み出した方ですか。
写真家という枠に収まらない活躍ぶり。
今回は古典との対話というか、本歌取りの手法を
用いて、屏風仕立ての作品に仕上げてるんですね。
もともとは古美術商を営んでる方でしたっけ。
その創作アイディアの多彩さにただ圧倒される思いです。
杉本博司氏の発想の豊かさを今回の展覧会で
より鮮明に印象付けられました。
「ダコティによる解剖図」の引用など驚かされました。
本歌取りの手法でここまで自由に表現する
彼の力量が凄いなぁと唸りました。
見て本当によかった展覧会でした。